【ヒル_黄道特急】

黄道特急を汚染させた元凶であり災禍の根源

際限なく増殖を続けるそれは新たな犠牲者に狙いをつけた。

よじ登るヒル

音もなく近づき体をよじ登るヒル

それぞれが首筋や脇腹、鼠径部といった食い破り出血させやすい箇所に殺到している。

 

そしてそれらは一斉に鋭い牙を立て男の血を舐め啜る

痛みのあまり苦悶の声をあげ身をよじるも『餌』の存在を認識したヒル達が簡単に離れるはずもない

痛みに耐えヒルを引きはがす

本来は禁忌だが強引に引きはがすしかない

皮膚を裂くほどの鋭い牙を持ったヒルを引きはがすたび激しい痛みが走り

廊下に男の苦しむ声が木霊した。

執拗に群がるヒル

逃れる術を模索する男に尚執拗に迫るヒル

追い詰められた男の体中にじっとりと血と汗、汚れた粘膜が絡み付き

痛ましく、悍ましい光景が広がる

 

血の匂いをかぎつけその数を増やし続ける

抵抗もむなしく肉まで齧り取られ、血に塗れる男

血の匂いに色めき立ったヒル達がさらに男の体に群がる

足元から這いより、滑り込むように体を登ってくる

血を失い疲弊しきった男は抵抗の手が弱弱しくなりつつあった

苦悶の果て

従軍経験のある男にとってヒルの脅威は身に染みて理解しており

自身の生還がもはや困難になりつつある事は

恐怖と痛みとともに脳に焼き付いていることだろう

最期の瞬間が訪れた

男の屈強な体はただの血袋と化し重々しい音を立てその場に崩れ果てた